※下記は経営者通信13号(2011年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―澤田さんは「経営者はカンが大事」とも言っています。経営者は自身のカンとデータのどちらを信じればいいのでしょうか。
澤田:どちらか一方だけを信じてはいけません。経営者はカンの裏づけとして、データをチェックするべきです。自分のカンと数字が一致していたら、どちらも正しい。しかし、時としてカンと数字が一致しないことがあります。その場合、原因を調査して、どちらかを修正します。たとえば、いろいろ創意工夫している間に、「売上が3割アップするだろうな」というカンが働きます。その後、データとして悪い数字が出てきたら、そのズレを修正します。数字は結果。そして、結果には必ず原因があります。その原因をつかんで、どんどん戦術を変えていく。経営はおもしろいですよ。
―どうすれば、経営のカンを磨くことができるのですか。
澤田:カンというのは経験値です。先天的な感性ではありません。ですから、同じようなことを何回も経験すれば、カンを磨くことができます。このカンが働くと、瞬時で本質がつかめます。数字が出てくるのは遅いので、カンで早く動いた方がいい。進行中のところに手が打てますから。カンが働かないところは、数字という結果を待ちます。私は数々の企業をこの方法で成長させてきました。まずはカンでどんどん手を打つ。そして数字が出てきたら、また修正する。そのくり返しです。
―その方法でハウステンボスも黒字化させたと。
澤田:ええ。冒頭でも少し話しましたが、ハウステンボスでは集客の2割を占めていた外国人客が震災後にゼロになりました。国内の団体客もキャンセルが相次ぎました。そこで具体的に何をしたか。まずカンを働かせて、最短でも3ヵ月は海外からお客さんが来ないと予測しました。だから、3ヵ月は外国人旅行者向けにヒト・モノ・カネを投入する必要はない。そして、海外営業の業務の7割を国内営業に振り向けました。さらに国内営業の中でも、最も見込みが高い顧客層の集客に力を注ぎました。それは西日本の個人客です。このような素早い方向転換をした結果、4月、5月の業績が回復したのです。
―カンが働くからこそ、スピーディーな決断ができるわけですね。
澤田:スピードの他にも、経営にはバランスが大切です。「ちょっといきすぎたな」とカンが働いたら、経営者がブレーキを踏まなければいけません。たとえば、倍々成長が5年も続いたら危険です。人と売上が倍々に増えると、社員教育とサービスの質が成長に追いつかなくなります。そして、サービスの質が落ちると、業績は一気に落ちる。そうなる前に、意図的に成長を止めなければいけません。もし、いま儲かっているとしても、どんどん設備投資すると危ないですよ。急に業績が落ちた時、資金繰りが悪化して倒産してしまいます。それはバランスを崩してしまったから。宇宙も国家も企業も人間もバランスが大事です。人間も栄養バランスが崩れると、病気にかかりやすくなりますから。
―ハウステンボスは単なるテーマパークにとどまらず、「観光都市ビジネス」を目指しているそうですね。なぜ、澤田さんはそのような大きなビジョンを掲げているのですか。
澤田:会社も国家もビジョンが必要です。ビジョンがなければ、戦略も戦術も生まれません。5年後、10年後、どういう国を目指すのか、どういう企業にするのか。このビジョンこそが最も大切です。そして、それを実現するために、いま何をやるかを考える。たとえば、同じ登山でもエベレストと富士山では準備がまったく違うでしょう。富士山に登るなら、一人で軽いトレーニングをしておけばいい。でもエベレストなら、トレーニングだけでなく、登山の勉強をして、資金と仲間を集めて、装備を揃えなければいけません。つまり、目標さえ決まれば、やるべきことがわかる。メンバーも自律的に行動できるようになる。だからこそ、リーダーが大切なんです。これは国家も企業も同じ。ですから、経営者は明確なビジョンを掲げ、明るく元気にがんばってください。
- プロフィール■澤田 秀雄(さわだ ひでお)
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1951年、大阪府生まれ。1973年に旧西ドイツのマインツ大学に留学。在学中に世界50ヵ国以上を旅行する。1980年、新宿にて旅行会社(現:株式会社エイチ・アイ・エス)を開業。格安航空券の販売を柱に事業を発展させ、1995年3月に店頭公開。1996年にスカイマークエアラインズ株式会社(現:スカイマーク株式会社)を設立し、1998年に国内航空業界への新規参入を果たす。1999年、協立証券株式会社の株式を取得し、エイチ・アイ・エス協立証券株式会社(現:エイチ・エス証券株式会社)の代表取締役に就任。2003年にはモンゴルAG銀行(現:ハーン銀行)の会長に就任。2004年、エイチ・エス証券株式会社を大証ヘラクレスに上場させる。同年、株式会社エイチ・アイ・エスは東証一部に上場。2010年3月、ハウステンボス株式会社の代表取締役社長に就任。開業以来18年連続赤字だった同社を黒字に転換させる。現在は澤田ホールディングス株式会社の代表取締役社長、株式会社エイチ・アイ・エス、エイチ・エス証券株式会社の代表取締役会長の他、経団連理事、アジア経営者連合会理事長も務める。

株式会社エイチ・アイ・エス
■設立/1980年12月19日 ■資本金/68億8200万円(2010年10月31日現在)
■売上高/3,088億円(2010年10月期) ■社員数/4,298名(2010年10月31日現在)
■事業内容/旅行事業、ホテル事業、不動産業 ■URL/http://www.his.co.jp/
ハウステンボス株式会社
■開業/1992年3月25日 ■資本金/15億円 ■売上高/55億7,000万円(2010年9月期)※4~9月の半年間
■従業員数/1000名 (2010年10月1日現在) ■URL/http://www.huistenbosch.co.jp/
■事業内容/パーク事業、ホテル&リゾート事業、レストラン事業、物販事業など
澤田ホールディングス株式会社
■設立/1958年1月21日 ■資本金/122億23312,331万円(2011年3月31日現在)
■営業収益/171億65006,500万円(2011年3月期連結) ■社員数/43514,351名(2011年3月31日現在連結)
■事業内容/グループ各社の経営の支配及び管理 ■URL/http://www.sawada-holdings.co.jp/
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