※下記は経営者通信8号(2010年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―どんな買収の話があったのですか?
熊谷:外資系ファンドから「GMOインターネットを500億円で売ってくれ」という話が持ちかけられたこともありました。「今回の責任を取って僕の保有する株式を売却する」、そういう名目なら株主への説明も付いたでしょう。そうすれば、僕は売却益で得た数百億円を持って、ハワイでのんびり余生を過ごせる。数十億円もの借金を背負う必要もありません。でも、僕はこの買収話を断りました。やはりGMOインターネットは売れなかった。僕にとって本当に大事なものは、お金じゃない。やはり「夢」と「仲間」なんです。GMOインターネットグループの社員たちは、僕の掲げた「インターネット産業で圧倒的ナンバーワンになる」という夢に人生を賭けてくれている。そんな仲間を裏切れなかったんです。僕は借金を背負ってもいい。絶対に夢はあきらめないと決意しました。
―その後、どうやって危機を切り抜けたのですか。
熊谷:債務超過を防ぐため、様々な手段で資本増強を続けました。2007年12月には、ヤフーさんに約14億円の増資を引き受けてもらいました。さらに、僕の所有していた不動産を現物出資しました。現物出資による増資は、上場企業では異例のこと。それでも顧問弁護士や会計士などのサポートを受け、ギリギリのタイミングで45億円の現物出資に成功。債務超過を回避したんです。ここですべての損失処理を完了し、ついに危機を乗り切ることができました。
―間一髪で債務超過の危機を乗り越えたわけですね。この危機を乗り越えられた理由は何だと思いますか。
熊谷:幹部たちが会社を支えてくれたからです。彼らは朝から晩までディスカッションし、シミュレーションを続けた。どうしたらこの危機を乗り越えられるのか。もう1000通り以上のシミュレーションをしました。普通、会社が危機に陥ると、幹部って辞めていくものです。でも当社の幹部は、誰ひとりとして辞めなかった。こんなに嬉しいことはなかったですね。
―今回の危機を振り返って、熊谷さんはリスクの取り方についてどう考えるようになりましたか?
熊谷:危機の渦中、ずっと僕は考え続けていました。なぜ今回のような危機的状況を招いてしまったのかと。そこで気付いたことがあったんです。それは、自分の身の丈を考えずに、非常に大きなリスクを取ってしまったこと。GMOインターネットと僕個人の資産を合わせた限界ギリギリの金額を賭けてしまったんです。ギャンブルにたとえるなら、僕らは15年近く着実にチップを積み上げていました。でも、積み上がったチップをルーレットの大一番にすべて賭けて、全部持っていかれてしまった。つまり投資金額のリスクマネジメントができていなかったんです。ですから、今後はリスク管理を徹底します。限界投資額は資産の3分の1までに定めました。3分の1なら失敗しても倒産しません。もう二度と同じ失敗は繰り返しません。
―ローン・クレジット会社を買収する際、「GMOインターネットのすべてを賭けている」という認識はあったのですか。
熊谷:もちろんありました。しかし、当時はライブドアショックが起きる前。世の中はITバブルに沸き、いくらでも資金調達ができる空気がありました。また、それまで当社には大きな失敗が一度もなかった。ですから、僕もどこかで慢心していたのかもしれません。今回の危機を経て、僕も改めて原点に戻れたと思います。やはり大事なのは「夢」「仲間」「一点突破」の3つ。この3つを大事にしながら、インターネット産業で圧倒的ナンバーワンになりたいと思います。
- プロフィール■熊谷 正寿(くまがい まさとし)
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1963年、長野県生まれ。1991年に株式会社ボイスメディア(現:GMOインターネット)を設立し、代表取締役に就任。1999年に独立系インターネット企業として国内初の店頭公開を果たす。2005年6月に東京証券取引市場第一部に上場。日経ベンチャー「99年ベンチャーオブザイヤー」(新規公開部門2位)受賞。2003年に米フォーブス誌が選んだ「Best Under a Billion,Forbes Global’s 200 Best Small Companies for2003」(米国以外の企業で、かつ年商10億ドル以下の上場または店頭公開している成長企業200社)にも選ばれる。著書に『一冊の手帳で夢は必ずかなう』(かんき出版)、『20代で始める「夢設計図」必ず“スピード成功”する5つの原則』(大和書房)などがある。

◆設立/1991年5月24日
◆資本金/12億7,683万円(2009年12月31日現在)
◆売上高/381億9,500万円(2009年12月期連結)
◆社員数/1,708名(2009年12月31日現在)
◆事業内容/WEBインフラ・EC事業、インターネットメディア事業
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