※下記は経営者通信3号(2009年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―ストックオプションを導入するメリットは何ですか?
細田:メリットは大きく2種類に分けられます。ひとつは付与する側、つまり会社にとってのメリット。もうひとつは付与される側、つまり役員や従業員にとってのメリット。まず付与する側にとってのメリットが3つあります。1つ目は「インセンティブ効果」。企業価値を高めながらIPOを果たすことで、付与対象者は多額の報酬を得ることができます。このため、役員や従業員のモチベーションが高まり、IPOへの成長ドライブがかかりやすくなります。IPO準備は困難の連続です。全社員が一致団結して、数多くの壁を乗り越えなければいけません。だからストックオプションのインセンティブ効果によって、ベクトルを統一する必要があるわけです。 またストックオプションを導入すれば、自分の成果が株価という形で市場から正当に評価される可能性が高い。したがって、目標に対する報酬体系が明確になり、インセンティブ効果がより高まります。
―なるほど。では他のメリットを教えてください。
細田:2つ目は「財務効果」、つまりキャッシュ節約効果です。ストックオプションは会社から金銭を支出する必要がありません。そのため賞与などのインセンティブツールと比較して、キャッシュを節約できます。付与対象者は株式市場からキャッシュを得るわけです。特に中核事業への多額の投資が必要なIPO準備会社の場合、キャッシュを節約できるストックオプションは非常に魅力的です。また成果報酬型の給与体系を採用している会社は、このメリットが特に大きい。なぜなら金銭として支出している成果報酬をストックオプションの付与で代替できるからです。つまり、成果報酬型の給与体系を維持しながら、キャッシュ負担が減らせるわけです。そして3つ目のメリットは「人件費の削減効果」。未公開企業の場合、ストックオプション費用を損益計算書に計上しなくて済むケースがあります。結果、現金賞与に比べて、損益計算書上でコストを削減することができます。
―自社の人事戦略に沿ってカスタマイズができるということですね。
細田:ええ。また、付与される側のメリットは「節税効果」です。現金によるインセンティブと比較すると、付与対象者に対する節税効果が大きい。たとえば2,000万円の報酬を賞与で得た場合、最高税率の50%(所得税40%、住民税10%)が適用されます。 一方、ストックオプションで2,000万円の利益を得た場合、上場企業であれば税率は10%(所得税7%、住民税3%)が適用されます。非上場企業であれば20%(所得税15%、住民税5%)。ストックオプションは譲渡所得として申告分離課税となるため、給与所得のような累進課税は適用されず、いくら利益を得ても一定税率しか課税されません。ただし、このメリットを享受するには、基本的に“※税制適格ストックオプション”として設計する必要があります。 つまり、ストックオプションは会社にとっても、役員・従業員にとってもメリットが大きいんです。もしIPOできなかった場合も会社の支出はゼロ。必要なコストは、私たちのような専門家に支払うコンサルティングフィーのみです。もし経営者が本気でIPOを目指しているのであれば、ストックオプションを導入して損はありません。実際、新興市場に上場している企業の多くがストックオプションを導入しています。
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―しかし、ストックオプションにはデメリットもあるのではないですか?
細田:そうですね。メリットとデメリットを整理すると、このようになります(上図参照)。また、ストックオプションは“劇薬”だと誤解されがちですが、決してそうではありません。通常の現金報酬や人事制度と組み合わせることにより、無理のない形で役員・従業員の会社へのコミットメントを高めることができるんです。