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IPOデキる経営者 デキない経営者

※下記は経営者通信1号(2009年5月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
 

―IPOに際しては、監査法人から監査証明をもらう必要があります。監査法人はどうやって選んだらいいでしょうか。

笹本:基本的に“人”で選ぶというスタンスは変わりませんが、大手監査法人と中小監査法人では大きな違いがあります。私は大手監査法人の中央青山監査法人で27年間働いていたため、大手監査法人の内情は良く分かっています。また、1年ほど中小監査法人で働いたこともあるので、当時の自分の経験をもとに、大手監査法人と中小監査法人のメリット・デメリットをお話しします。まず大手監査法人のメリットは、サービスの質が比較的安定している点とIPOに関しても多くの事例を持っている点です。

 また、海外の大規模な国際会計事務所のメンバーに入っているため、グローバル企業の監査を特に得意としています。しかし、その一方で中央青山監査法人では大手監査法人のデメリットもたくさん見てきました。たとえば、海外の巨大国際会計事務所のメンバーである以上、本部へのロイヤリティーやソフトウェア使用料、世界規模での保険料の割当等、莫大なコストを負担していました。さらに国内の社員(パートナー)や職員が3千人以上、クライアント数も5千社を超えていたので、その管理のための間接部門の運営に膨大なコストがかかっていました。ちなみに、中央青山監査法人では、海外の会計事務所へのロイヤリティーや間接部門の費用が総売上高の20%を超えていたときがありました。もちろん、その膨大なコストはクライアント企業の監査報酬に跳ね返ってしまうわけですが。

 一方、中小監査法人のメリットは、国際会計事務所のメンバーではないのが普通で、規模も小さいため、コストが低く抑えられる点です。しかし、中小監査法人の代表社員や社員(パートナー)のほとんどは税理士事務所を兼業しており、監査業務に専念できていない場合が多い。さらにIPO支援の経験のある会計士がいないケースも多いのです。つまり、IPOに限ってみると、サービスの質が低くなる虞おそれがあるというデメリットがあるんです。

―なるほど。大手はコスト面、中小はサービス面に問題があると

笹本:そうですね。日本には大手・中小の良いところ取りをしている監査法人がありません。つまり、サービスの質が高く、コストの低い“ミドルクラスの監査法人”がない。これは私が中央青山時代から問題視していたことでした。実は、監査法人A&Aパートナーズが設立された目的は、この“ミドルクラスの監査法人”の役割を担うためでした。つまり、大手・中小の監査法人のメリットを併せ持つ監査法人を実現したいと考えて設立されたんです。 当法人は中央青山監査法人出身のパートナーとスタッフが中心で、パートナー全員の過去の経験では50社以上のIPOを成功させた実績があります。また当法人では税理士事務所等の兼業を禁止しているため、全パートナーとスタッフが専任で会計監査やIPO支援に携わっているので、サービスの質は高いという自負もあります。 また、私たちパートナー自身が中央青山時代に大手監査法人の非効率性を痛感したので、当法人は効率性を非常に重視しています。具体的には、巨大国際会計事務所のメンバーファームにはならず、組織規模を無理に拡大せずに、少数精鋭のプロフェッショナルファームを目指しているんです。

―笹本さんは、これまでに数多くの企業のIPO支援を手がけてきたと思います。「IPOできる経営者」と「できない経営者」、その違いは何だと思いますか。

笹本:これまで私が29年間でIPO支援を手がけたのは119社。そのうち、実際にIPOを果たしたのは28社。つまり、実際にIPOできるのは私の経験則では2割程度でした。 そして、私が考える「IPOに成功する経営者の条件」は3つあります。1つ目は、自社の事業に夢中になっている人。自社の事業に惚れ込み、この事業こそ天職だと信じている経営者です。やはり経営者はむやみに本業以外に手を広げず、ひとつの事業を深く追求する方が成功すると思います。2つ目は、運が強い人。たとえばビジネスというのは、タイミングが非常に重要です。事業参入のタイミングが早すぎても、遅すぎても失敗します。乱暴な言い方になりますが、そのタイミングの差を分けるものは、経営者の運が強いかどうかだと思います。

 そして3つ目は、感謝の気持ちを持っている人。一時期、アメリカ流の株主至上主義が叫ばれていましたが、会社は株主だけのために存在しているわけではありません。会社には多くの従業員が働いており、従業員と従業員の家族の支えがあって初めて会社は成り立ちます。ですから、従業員、取引先、株主など、すべてのステークホルダーに対して感謝の気持ちを持つべきなんです。そんな感謝の気持ちを持っている経営者ほど中長期的に成功すると思います。

―最後に、IPOを目指す経営者へメッセージをお願いします。

笹本:現在のような不景気の時こそ、IPO準備を始めるべきだと思います。私の経験上、IPOに失敗したり、時間がかかったりする会社ほど、好景気の時にIPO準備を始めがちだからです。景気は常に循環しています。好景気の時にIPO準備を始めた会社は、景気が落ち込み始めた時に上場申請をすることになる。そして、不景気の影響で会社の業績が落ち込み、結局IPOを延期したり断念せざるを得ないケースが非常に多い。 現在のような不景気は10年も続かないと思います。理想的なのは、何年か後に景気が回復し、株式市場が活況になってきた時に、証券市場にデビューできるようにすることです。そのためにも、ぜひ今から計画的にIPO準備を進めておくべきだと思います。
  
プロフィール笹本憲一(ささもと けんいち)

公認会計士。監査法人A&Aパートナーズ代表社員。1951年、和歌山県生まれ。中央大学商学部を卒業、日本大学大学院を修了(経済学修士)。日本大学講師、監査法人中央会計事務所を経て、監査法人A&Aパートナーズ代表社員に就任。上場会社、会社法の大会社投資事業組合等の会計監査、及び株式上場準備中の会社に対しての支援、指導業務に携わる。各種セミナー講師としても活躍している。

 

会社概要

◆設立/1990年2月(2007年7月旧中央青山監査法人メンバー35名と合流)
◆資本金/4400万円
◆メンバー/公認会計士30名(パートナー13名を含む)、会計士補・準会員等12名、IT専門家等その他の職員14名 計56名
◆事業内容/アシュアランス業務、アドバイザリー業務

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TEL

03-5200-1636

URL http://www.aap.or.jp/

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