変化をチャンスに変えよ

※下記は経営者通信2号(2009年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
 

―これからの世界経済の展望を聞かせてください。

 景気循環の大きな波は資本主義のメカニズムのひとつです。したがって、この大不況もしばらくすれば沈静化して、再び景気が回復するでしょう。

 また、人間は学習する生き物です。同じ失敗を繰り返せば、次第に学んでいきます。これから社会がもっと成熟すれば、今回ほど極端に景気の波も振れなくなるかもしれません。近年、NPOや社会起業家が増えているのも、お金儲け以外の価値観を持った人が増えている証だと思います。グロービス経営大学院が目指しているのも、お金儲けのみを目的とせず、ビジネスを通じて社会の問題を解決する経営者を育成することです。当社はそのような人を“創造と変革の志士”と名づけて、その育成に力を注いでいます。

―現在、大不況が日本を直撃しています。最後に経営者へアドバイスをお願いします。

 不況時のアドバイスは3つあります。1つ目が「変化に適切に対応すること」。企業経営は航海に似ています。海の風向き、つまり経営環境は日々刻々と変わる。船長はその風向きに合わせて、帆を動かさなければなりません。たとえば1兆円の利益をあげていたトヨタさえも、風向きを見誤りました。わずか1年前は正解とされていたトヨタの拡大路線が、ある時期から不正解に変わったんです。ですから、経営者は朝令暮改を恐れず、自社を素早く変化させるマインドを常に持つべきです。

 2つ目が「自社の進むべき道を明確に示すこと」。不況時は人心が乱れやすい。そのためリーダーが自社の方向性を明確に示して、組織の結束を固める必要があります。経営者が自信を持ってメッセージを発信すれば、会社が内部から崩壊することもないでしょう。

 3つ目が「この不況をチャンスと捉えること」。100年に1度の不況は、100年に1度のチャンスでもあります。変化が激しい今こそ、多くの中小・ベンチャー企業にチャンスが生まれます。なぜなら、これまで圧倒的優位に立っていた大企業の基盤が揺らぐからです。中小・ベンチャー企業の経営者は自社のリソースを正確に把握して、それを最大限に有効活用する戦略を徹底的に考えてください。
 また、現在ほど改革を断行しやすい時期はありません。なぜなら好況時に改革しようとすると、社内から異論が噴出するからです。「儲かっているんだから、このままでいいじゃないか」と。現在の大不況は、自社を大胆に変化させる絶好のチャンスです。経営者がチャレンジを楽しむ姿勢を持てれば、会社も良い方向に進むでしょう。
  
プロフィール堀 義人(ほり よしと)

京都大学工学部を卒業後、住友商事株式会社に入社。米国ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。1992年に株式会社グロービスを設立し、代表取締役に就任。1999年、エイパックス・グロービス・パートナーズ(現:グロービス・キャピタル・パートナーズ)を設立し、代表取締役に就任。2006年4月にグロービス経営大学院を開学し、学長に就任。2008年4月に大学院の設置者を学校法人に転換。若手起業家が集まる「YEO(Young Entrepreneur's Organization)」日本初代会長、世界経済フォーラム(WEF)主催のNew Asian Leaders 日本代表などを歴任。現在、経済同友会幹事、日本プライベート・エクイティ協会理事を務める。著書に、『MBAマネジメント・ブック』(ダイヤモンド社)、『人生の座標軸』(講談社)、『吾人(ごじん)の任務』(東洋経済新報社)、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)などがある。

 

会社概要

◆設立/1992年8月<br />◆事業部門/グロービス・マネジメント・スクール、グロービス・オーガニゼーション・ラーニング<br />◆グループ会社/株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ (大学院事業は、2008年4月、学校法人グロービス経営大学院に設置者を転換)

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