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北星鉛筆株式会社 代表取締役社長 杉谷 和俊

多くの人へ北星の鉛筆を届けたい

北星鉛筆株式会社 代表取締役社長 杉谷 和俊

北星鉛筆は、1951年に創業した鉛筆製造メーカーだ。鉛筆の市場が年々縮小する中で、「鉛筆がある限り、鉛筆をつくり続ける」という信念を基に、消費者へ良質な鉛筆を届けている同社は、ロングセラーな定番の鉛筆だけでなく、高級感のある金属の金具でつくられた鉛筆"大人の鉛筆"など、ヒット商品を生み出してきた。鉛筆への熱い想いと、独創的な発想でヒット商品を生み出し、同社を牽引するのが、今回お話しを伺った杉谷社長だ。
鉛筆をつくり続ける家業を守り、それを次世代へつないでいくことを人生の使命と語る杉谷社長。
そんな杉谷社長に、同社の魅力を語っていただいた。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
  • 社風
    モノづくりが好きな社員 モノづくりを楽しめる環境
    「モノづくりが好きな人しか採っていない」と語る杉谷社長。
    その方針もあって、モノづくりへ熱い気持ちを持っている社員が集まっている会社が、北星鉛筆だ。時間を忘れてモクモクと鉛筆づくりの仕事に取り組む職人肌な社員が多く、鉛筆の品質には一切妥協しない姿勢は真剣そのものだ。
    そして、社員がモノづくりを楽しめる環境が同社にはある。大企業では、効率を追求した結果、細かい分業制になっており、色々な工程に携わることは難しい。しかし、同社では、2ヵ月に1回の職場変更をしており、工程間の垣根をできるだけ取り除いているため、モノづくりに広く深く携わることができる。また、杉谷社長の方針として、「(社長から)言わない、(自分達で)やらせる」というものがあり、社員一人ひとりが自分で思いついたことをどんどん実行できる環境もある。
    深く色々な工程に携わることができ、自分の発想を活かしてモノづくりに励むことができる環境が、社員のモノづくりへの想いをさらに強めているのだろう。
  • 独自性
    鉛筆をつくり続けた100年の伝統と、新しいアイデア
    「同社の強みは、愚直に鉛筆をつくり続ける姿勢からきています」と杉谷社長は話す。 この鉛筆へのこだわりがあって初めて、100年の歴史の中で培ってきた伝統と、鉛筆に関する斬新な発想という同社の独自性が生まれている。
    ずっとお客様に愛され続けている定番のロングセラー鉛筆は、まさにその100年の伝統の象徴だ。1本の鉛筆を分業でつくる会社が大多数を占める中で、同社は自社で一貫して鉛筆をつくり続けてきたからこそ、スラスラと書きやすく、手になじみやすい良質な鉛筆をつくることができる。
    そして、"大人の鉛筆"などの新しいの商品や鉛筆神社などの面白い取組みはまさに、鉛筆に関心を持っていない人でも飛びつきたくなる斬新さを持っているが、これも「鉛筆をどう生かすか」ということを突き詰めなければ出てこないアイデアである。
    鉛筆へのブレないこだわりがあるからこその伝統とアイデア。このこだわりが次に何を見せてくれるのか、ワクワクせずにはいられない。
  • 展望
    多くの人へ北星の鉛筆を届けたい 販路拡大へ向けた業務提携
    「多くの人へ北星の鉛筆を届けたい」それ杉谷社長の願いであり、北星鉛筆の想いだ。同社のつくった鉛筆を手に取って、愚直に鉛筆をつくっているその想いを感じてもらいたいと語る杉谷社長。大人の鉛筆を買った消費者からは、その想いを受け取ったのか、感謝やお褒めの手紙がたくさん来ているそうだ。「『応援したい会社だ』となれば最高ですよね」優しく笑顔で語る杉谷社長の表情は明るい。
    一方で、伝統製品である鉛筆であるが、消費量が最盛期だったころと現在を比較すると、その市場は徐々に縮小し、売り場のスペースも小さくなっていることも事実だ。だからこそ、いかに同社がつくったものを、一般のお客さんに届けるかということが重要課題になってくる。そんな中で、2015年にパイロットコーポレーションから来た「一緒に鉛筆をつくらないか」というオファーを受け、業務提携を結んで、販路拡大をすることを決めた杉谷社長。「多くの人へ北星の鉛筆を届けたい」という北星鉛筆の想いはさらに加速していくだろう。
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トレードマークの鉛筆が可愛らしい
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色鉛筆の製造過程
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工場見学も北星の魅力の1つ

杉谷社長に聞く、鉛筆づくりへの想い

―鉛筆の良さについて教えてください
鉛筆って、人を裏切らないんですよ。文房具屋の売り場に行くと、どのお店にも試し書きコーナーがありますよね。何故あるのかというと、ボールペンなどはペンによってインクの出方も違いますし、書き方のクセもバラバラだからですよね。それに対して鉛筆は、試し書きがいらないですよね。どの鉛筆でもちゃんと思いのままに文字を書くことができるということです。そして、とめ、はねもキチンとできます。これは子供の教育にとっても良いですよね。だから学校という教育の場では昔から長年にわたり鉛筆が愛用されてきたのだと思います。
さらに、大人の鉛筆を購入されたお客様からは「昔を思い出して感動した」というお声をたくさんいただきましたので、大人にとっては思い出の品という価値もあるのでしょう。
―鉛筆をつくり続けている想いの背景を教えてください
学生に自分の道を決めるということについて「これから将来色々な行く先はある。色々あるんだけれども、ほとんどの人がどの道に行けば良いのかわからない。そういう時は、自分のルーツを調べること。両親がいて自分がいる。両親はどういう想いでどういう仕事をしているのか、おじいちゃんおばあちゃんは?その前は?それを辿っていくと自然と自分の行くべき道が見えてくる」と学生によく言っています。私自身も、先祖が代々鉛筆をつくってきて、それを引き継いだわけですから、そこには創業者の想いがあって、両親の想いがあるわけです。それを簡単に「はい、止めます」とはとても言えないですよね。この想いを次の世代に繋いでいくことが私の使命であると考えています。
―新商品開発の秘訣を教えてください
新商品を開発する時に心がけていることは、"想い"で商品化することです。 昔はモノをつくれば売れた時代がありました。でも、今はもうそういう時代でもないですよね。「こういうモノがあったらさぞ良いだろうな」という"想い"で商品化しなければ、なかなかヒットしません。そこを考え続けなさいと。考え続けないと生み出す力はゼロになります。考え続けて、絶えず相手や周りの人の気持ちを考えて一手を打つことで、初めてヒット商品が生まれます。その時の目線は、目の前の細かいことに捉われるアリではなく、広く社会のことを見渡す鳥でなくてはなりません。そうしなければ、その時代を掴むことは難しいでしょう。

KEYPERSON

北星鉛筆株式会社 代表取締役社長 杉谷 和俊

「鉛筆といえば北星」そう言われる会社に、僕がする

北星鉛筆株式会社  専務取締役 杉谷 龍一

鉛筆を専門に作っている国内の鉛筆メーカーの中でも、トップクラスのシェアと売上を誇る、北星鉛筆。その次期社長が、杉谷専務だ。杉谷専務は開発、製造、営業、管理と社内の殆ど全ての業務に精通しており、誰よりも会社の事を知っている、まさにキーマンといえる人物だ。社長1人では担いきれない役割を、杉谷専務がNo.2として担っているのである。社長から次々と生み出されるアイデアを着実に形にし、次々に「もくねんさん」「大人の鉛筆」などのヒット商品を生み出すなど、実績も数多い。そんな杉谷専務の鉛筆に対する思いのルーツと、これからの北星鉛筆のビジョンについてお聞きした。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
  • 入社理由
    「鉛筆」は常に自分の中にあった
    杉谷社長の実の息子にあたる杉谷専務。経済学部を卒業し、新卒で北星鉛筆に入社したのは、幼少の頃からずっと、「鉛筆屋をやる」という思いがあったから。「中学、高校の頃は別の事をやりたいって気がしたこともありました。ただ、最終的に鉛筆というのは常に頭の中にありました」杉谷専務は、はにかみながら言った。「身を削って夢を描く鉛筆を、身を削って作り続ける」という家訓の中で育ち、ひたむきに鉛筆づくりに汗を流す父の背中を見続けてきた杉谷専務の心の根っこには、自分の将来への葛藤にも負けない、鉛筆への思いが確かにあったのだ。そして入社後は鉛筆を作る工程で生まれる廃材を再利用する「再商品化事業部」の立ち上げ、新商品の開発など敏腕を振るってきた専務。すでに「もくねんさん」や「大人の鉛筆」など、様々なヒット商品を世に送り出してきた。杉谷社長の「鉛筆を作り続ける」という思いを引き継ぎ、邁進する杉谷専務の活躍に、これからも目が離せない。
  • やりがい
    鉛筆の新たな価値を生み出せた時、それが原動力
    「鉛筆の良さをもう一度思い出してもらいたいんです。だからそのために新しい商品を作って鉛筆に付加価値をプラスして、様々な形で鉛筆をティーアップできた時に喜びを感じるんですよね」仕事にやりがいを感じる瞬間について杉谷専務はこう語った。少子化の影響や文房具の多様化に伴い、鉛筆業界最盛期の昭和30年代は年間13億本余り生産されていた鉛筆も、今では年間2億本程生産されるにとどまっている。日本においては業界そのものが先細りしつつある鉛筆産業で、どう生き残っていくのか、どう人々の生活の中に残していくのか。鉛筆の木くずからつくった「もくねんさん」や、ヒット商品「大人の鉛筆」などの新製品の開発は、全ては鉛筆を作り続け、そして鉛筆に魅力を感じてもらうためだと、杉谷専務は力を込めて語った。「『久しぶりに鉛筆を使いたくなった』とお客様から声を頂いたり、その効果がだんだんでてきていると感じます」そう言う杉谷専務の目は、鉛筆の価値を再発見してもらえた、という喜びに満ちていた。
  • 夢
    「世界に通用する北星にする」杉谷専務の決意
    「自分が、世界やこれからの時代の流れにも耐え得る北星にする」これが北星専務の夢だ。これを実現するためには、新しい鉛筆の価値を生み出すことと、加えて日本という枠を超えて世界へ漕ぎ出していくことが必要だ。「現在は新商品のアイデアを社長が生み出し、それを私が形にしているという流れですが、いずれは自分がアイデアになります」専務は社長の後の役割を自分が担う決意を真剣な目つきで語った。更に海外へ進出していく具体的な戦略としては、大手文具メーカーとの業務提携がある。杉谷専務は、これにあたり社内の地盤づくりに尽力すると力強く語った。「業務提携を通じて、海外にも北星の鉛筆が送り出されていくことになります。なので、鉛筆の製造数が今より格段に増える事が予想されます」業務提携、生産数の増加と、新たな局面を迎えつつある北星鉛筆。故に、社内の生産体制強化の為の機械刷新といった地盤づくりが急務なのだ。夢の実現へ向け、盤石の構えを見せる杉谷専務に、死角はない。
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滑らかな形が魅力の「大人の鉛筆」
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もくねんさんを用いた作品の数々
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短くなった鉛筆を供養する鉛筆神社

鉛筆を作り続ける者として、次期後継者として杉谷専務が今、思うこと

―鉛筆を作る上での面白さを教えてください
鉛筆は木製品なので、生きているんです。だから、いくらやっても終わりがないし、正解がない。こうやれば上手くいくだろうってやっていても急に上手くいかなくなってしまったりします。これが一番難しく、面白いところですね。湿度や温度など、その時の環境で木の性質が変わってしまいます。1本の木でも、南の方角の側面なのか、北側の方角の側面なのかでも、日の当たり方が違うので、全く別の性質になってしまうのです。だから1本の木の中で同じ性質の木材はほとんどありません。その木材がどんな木材なのかを一つひとつ見極めて、均一な品質の鉛筆を沢山作らなければなりません。高度な技術が要求されるが故に、鉛筆を作る上で一番難しいところですが、一番面白いところでもあります。
―社長になるにあたって、一番大切にしたいことはなんですか
ズバリ、社員との信頼関係をしっかりと強固に築いていくことです。
今は、技術力の高いベテラン社員が年齢のため引退していった中で、現場の社員達はベテランに追いつけ追い越せという姿勢で頑張ってくれています。社員達が現場で成長しようと努力しているのだから、私自身も次期経営者としてもっと経験値を積んで、お互いに理解しあえるような関係性を作っていきたいと思っています。僕1人が社員皆に対してあれこれ言っていくのではなく、一緒に会社を良くしていくという間柄になりたいと思っています。これは北星鉛筆だけではなく、全ての中小企業に共通することだと思いますが、やはり、団結感、団結力が一番重要ですね。困ってたら何とかしてあげよう、という気持ちに自然になるような文化を社内に作っていきたいです。
―どんな人達と一緒に働きたいですか
本当は素晴らしい鉛筆の価値を、どうすれば思い出してもらえるのか、買ってもらえるのかということを考えてくれる人達と一緒に仕事がしたいですね。自分は何もない状態からやってきたから、どうすれば良いか、常に考え続けてきました。だから僕と同じように積極的にやっていきたいという人がいると、一番嬉しいです。繰り返しになりますが、僕達が考えなければいけないことは、鉛筆をいかに使ってもらうか、ということです。鉛筆はとっても良いものなのに、なかなか使ってはもらえない、今はそんな時代です。それを変えて、どうしたら鉛筆を知ってもらえるのか、買ってもらえるのか、肌で感じてもらえるのか、という事を一緒に考えていきたいです。
■監修企業からのコメント

北星鉛筆株式会社 代表取締役社長 杉谷 和俊

噴出し左
今回取材に伺ったのは北星鉛筆株式会社。敷地内にはもくねんさんを使った作品作りを体験できるスペースもあり、休みの日には近所の子ども達が遊びにくることもあります。さらには、短くなった鉛筆を供養する「鉛筆神社」を建立するなど、非常にユニークな取り組みをし続けている会社です。皆さんも、家の中に短い鉛筆があったら、北星鉛筆に足を運んでみてください!
■掲載企業コメント

北星鉛筆株式会社 代表取締役社長 杉谷 和俊

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取材を終えた感想
今回の取材を受けて、北星のこれまでの歩みと歴史を改めて見つめなおすことができました。創業からの思いを大切に、これからも、「書こうよ夢を思いっきり」の北星の精神を発信していきます。今回はこのような機会を頂きまして、ありがとうございました。
北星鉛筆株式会社
代表取締役社長 杉谷 和俊
1909年 木(水松[別名オンコ、イチイ])の豊富さに目を付け、
     杉谷木材を開業。鉛筆用の板を製造し内地での販売した。
     板製造では一番最初の企業
1913年 北海道の佐呂間に工場を設立、15馬力のガスエンジンで鉛材を
     製造し、伊勢の津にある伊藤鉛筆に出荷した
1941年 戦争により板業者が統合、北海道鉛筆材工業組合となる
1943年 東京大井の月星鉛筆を買収、北星鉛筆文具株式会社を
      設立した(本社釧路市)
1944年 北星鉛筆文具㈱に参加
1951年 東京に北星鉛筆㈱を設立
2006年 木の粉を使った粘土「もくねんさん」発売
2011年 なめらかな書き心地が魅力の「大人の鉛筆」発売
2015年 大人向けの鉛筆持ち方矯正器具「大人のもちかた先生」発売
創業年(設立年) 1951年
事業内容 鉛筆を中心とした文具・エコロジー商品の研究開発
所在地 埼玉県越谷市あずま町3-373
資本金 6,000万円
従業員数 28名
企業URL http://kitaboshi.co.jp/about/index.htm

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