DENTOU TIMES

株式会社伊藤鞄製作所 代表取締役 伊藤 勝典

100年続く鞄メーカーを作る

株式会社伊藤鞄製作所 代表取締役社長 伊藤勝典

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伊藤鞄製作所は1960年の創業以来、MADE in JAPANにこだわり、全ての製造工程を日本国内で行う鞄メーカーだ。安価な海外生産品との価格競争が厳しくなる中、国内での製造にこだわり、良いものを適正な価格で提供することに力を入れており、オリジナルブランドの商品は、百貨店やセレクトショップで人気を博している。高品質低価格を実現しているのは、創業者の時代から培われた高い技術力と素材の無駄を削減する独自の製造システム。「日本で三本の指に入る」と言われた伊藤会長の伝統の技術を若い職人たちが引き継ぎ、その上で、新たなシステムを積極的に取り入れることで生産力を高めてきたのである。今回の取材では、60人以上の職人集団を束ね、100年続く鞄メーカーを目指す伊藤勝典社長に、鞄製造に対する想いと伊藤鞄製作所の未来についてお話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
  • 社風
    やりたいことができ、言いたいことが言える自由な社風
    上下関係にとらわれないフレンドリーさが、伊藤鞄製作所の社風だ。例えば、社内では「伊藤社長、これを教えてください!」などの声が飛び交い、社員が直接社長から分からないことをマンツーマンで教えてもらう光景が見られる。その他にも社員の声掛けから社内の勉強会が企画されたり、仕事が終わった後にショールームで食事会をしたり、時にはお酒を飲みながら、職人と社長が腹を割って話し合ったりもする。その背景には、職人一人ひとりを成長させ、それぞれの職人が夢を実現することを何よりも大切にしたいという伊藤社長の想いがある。職人の世界では「見て学べ」という言葉に代表されるように、教える側が背中で語る指導が行われることもある。一方で、伊藤鞄製作所では、一人ひとりが夢を叶えようとする欲求や技術を追究したいという欲求を大切にしているため、積極的に学びの機会を用意。誰もがしたいことができ、言いたいことが言える会社をつくった。
  • 独自性
    真の「MADE in JAPAN」をつくる
    伊藤鞄製作所のこだわりは「MADE in JAPAN」。「MADE in JAPAN」とは単に日本製であるという意味ではない。日本の文化を知り尽くし、日本のライフスタイルに合うように一工夫が加えられているものが「MADE in JAPAN」であると伊藤社長は言う。 お客様に愛される商品をつくるために、伊藤鞄製作所では、日本の文化と海外の文化の双方について、アンテナを張り巡らせることを大切にしている。例えば、伊藤鞄製作所のブランドの一つであるREGALOでは、デザイナーは、イタリアやフランスのトレンドについて情報を仕入れつつ、店舗を構える原宿で、様々なファッションやたくさんの鞄から刺激を受けられる環境に身を置きながら日々学んでいる。最高峰の技術と、日本らしいきめ細やかな心遣いを融合させて、真の「MADE in JAPAN」と呼ばれる商品を生み出すこと。それが伊藤鞄製作所の独自性だ。
  • 展望
    日本一の鞄製造メーカー、そして100年続く企業へ
    伊藤社長の一つの目標は、鞄製造メーカーとして日本一になることだ。目指す規模は300人の職人集団、そして、一人ひとりの職人が夢・ビジョンに向かって突き進める会社。 多くの職人を抱え、職人がビジョンを叶えられる会社をつくることは、日本有数の鞄職人であった創業者の技術を後世に残していくため、また、職人の仕事を、世の中にもっと評価される仕事にしていくためにも必要不可欠なのである。伊藤社長は「100年続く企業になるために、会社の基盤づくりとして、伝統の技術を引き継ぎ伝えていくことは私の仕事。そのあと、会社の外に向けて、職人の仕事の素晴らしさ、『MADE in JAPAN』の素晴らしさを発信していくことは三代目となる人に任せたい」と言う。一代目から二代目、二代目から三代目へと会社のバトンが受け継ぎながら、100年続く鞄製造メーカーになる準備を着々と進めている。
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ショールームには自社の鞄が並ぶ
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ショールームの2階は工場
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本社工場兼ショールーム

業界に新風を吹き込む2代目社長の想い

-鞄職人になろうと思ったきっかけを教えてください
もともと、父と母が自宅で鞄工場をやっていて、扉を空けたらミシンを踏んでいるというような環境で育ちました。当時は、両親がこれだけ苦労して働いてもうちは貧乏なんだから、この仕事は絶対やらない方がいいと思っていました。転機となったのは、高校時代です。交通事故を起こして入院することになった時に、父と母が本当に色々と動いてくれたんです。看病をはじめ、学校や警察とのやり取りも全てやってくれました。毎日忙しくて、一年中仕事のことを考えていた両親が、自分のためにこれだけ動いてくれるというのを見て、恩返しするには仕事を継ぐしかないと思いました。父からは「やめた方がいい」と言われたんですが、技術を持った職人の仕事が世の中に評価されるようにしなくてはと思っていましたし、「やるからには絶対成功させるから」と父を説得して入社しました。
―会社が永続するための条件は何でしょうか
第一に、お客様に支持されることです。そのために、職人たちに「お客様のことを考えて、心を込めなさい。」と常に言っています。心を込めろなんて、馬鹿らしいと思うかもしれませんが「いいもんになれ」と思って仕事をすれば、裁断一つ、ミシン一つの出来もまるで違いますし、いいものをつくろうと考えると、ちょっとしたことにも気がついて、「直さなきゃ」となるんです。私自身、両親のところでやっていた時は、バッグの持ち手一つつくるにしても、「いいハンドルになれよ」と思いながらやってきましたから。一人ひとりの職人にもそういう思いを持ってやってほしいですね。最終的にお客様に提供できるかどうかの判断に関しては、職人に対して「自分がお客さんだったら、その商品を買うかどうかで判断をしなさい」という話をよくしますね。常に、お客様の目線で考えて商品の質を高く維持することは、自分との戦いとなるので、時に苦しいことがありますが、職人としてプライドをかけて取り組んでいます。
―人材育成に対する想いを教えてください
日本人の一番の長所はまじめさです。海外で大量生産する場合、不良品がいくつか出てしまうというのはよく聞かれる話です。一方、日本の職人は「じゃあ、この商品を100本、1000本つくりましょう」となった時でも、同じ質でずっとつくり続けることができるんです。それだけ良い仕事をしているにもかかわらず、職人の賃金は昔から低いままです。当社は、高い技術を持っている職人は高い報酬を得るべきだという考えから、大手メーカーさんと比較しても良い待遇を用意しています。また、職人になる人が少なければ、鞄製造業自体も廃れてしまうので、当社では「職人になりたい」「鞄づくりをしたい」と言う人がいる限り、たとえ未経験であってもどんどん教え込んでいって一人前の職人に育てています。職人を育てていく上で、自分たちの仕事にプライドを持てるようになってほしいと思っていますので、職場に関しても、ショールーム兼工場として、開放的な明るい建物で、いわゆる工場のイメージとは全然違うものを建て、とにかく職人がプライドを持てるようにと考えています。

KEYPERSON

株式会社伊藤鞄製作所 代表取締役 伊藤 勝典

一生愛される鞄を生み出す職人に

株式会社伊藤鞄製作所 片岡美菜

一般的に、経験の長さが実力となる職人の世界。経験の長い職人が難しい仕事を担当するというのが常識だ。しかし、伊藤鞄製作所では、その道何十年の職人が行うような仕事を、職人歴数年の職人が担当することができている。職人の飛躍的な成長を支えているのは、職人の「チャレンジしたい!」という思いに応じて、大いに技術を学べる環境だ。そうした環境を整えている背景には、職人全員に夢を持ってほしい、そして誰もが自分自身のビジョンや夢に向かって進めるようにしたいという伊藤社長の想いがある。今回の取材でお話を伺ったのは入社一年目の片岡さん。伊藤鞄製作所では、チームに分かれた生産体制を取っており、片岡さんは4つのチームの中で、社長と同じチームに所属している。社長の下で日々指導を受けながら、鞄職人としての実力を伸ばし、将来を嘱望されている片岡さんに、伊藤鞄製作所の仕事の面白さについて伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
  • 入社理由
    社長の情熱に触れて
    片岡さんは専門学校を卒業後、一般企業の広報担当を経て、鞄業界へと飛び込んだ。 元々、趣味で鞄教室に通うなど、鞄づくりに関心があった片岡さん。企業でグラフィックデザインの業務を行いながらも、常に胸の中では、鞄業界への憧れを抱いていた。しかし、鞄業界への転職を考える片岡さんの前に立ちはだかったのは、業界の慣習だった。鞄業界の求人は「経験三年以上」を必要とするものがほとんどで、未経験者の片岡さんを面接してくれる会社は少なかった。そんな中、「未経験者歓迎」の求人として発見したのが伊藤鞄製作所だった。面談をしている中で「鞄業界を変えたい」というビジョンを熱く語る伊藤社長に魅力を感じたという。実際に伊藤鞄製作所では、ビジョンに基づいて職人が働きやすい職場づくりや、高い技術を持つ職人が正当な報酬をもらえる仕組みづくりなど、独自の取り組みをしている。片岡さんも社長が情熱的にビジョンに向かって突き進んでいく姿に共感し、入社を決めたと語ってくれた。
  • やりがい
    努力が力になる
    「私は、鞄をつくる立場ですが、直接お客様の顔は見えなくとも、自分に力が付いていくことにやりがいを感じます」という片岡さん。伊藤鞄製作所では年齢や性別に関係なく、職人のチャレンジを歓迎し、年功序列ではなく実力通りに評価がなされるため、職人は自身の成長を明確に実感できる。昨年入社した片岡さんは、入社前に鞄製造に携わった経験はほとんどない。しかし、日々チームリーダーである社長に積極的に相談し、社長からの熱心な指導を受けながら、技術を磨いていった。その結果、昨年末には展示会に出展する鞄を一からつくり上げることができたという。「初めてやる仕事って、時間もかかるんですけど、やっていくうちにできるようになって、すごく楽しい」と片岡さんは言う。経験を積むチャンスを十分に得られる環境で、片岡さんが一人前の職人として腕を振るう日は近い。
  • 夢
    お気に入りの鞄を作る
    「一個一個を丁寧に作って、一人の人に一生使ってもらえる鞄を作るのが夢ですね。」 と片岡さんは力強く語ってくれた。一つの理由は、専門学校時代の教えだ。「ものをつくるということには、責任がある」と教わった片岡さん。良いものは、持ち主を良いライフスタイルに導き、良くないものは良くないライフスタイルに導く。つまり、一つ一つのものが、持ち主の人生に良くも悪くも影響を与えるという考え方だ。そしてもう一つの理由は、人々が無駄な買い物を控え、本当に好きなもの、気に入ったものを長く大切に使う時代になったということ。片岡さんはそんな時代だからこそ、品質もデザインも優れた商品で、「一生のお気に入りとなるような鞄をつくりたい」と言う。まずは、伊藤鞄の商品から、そして将来的には持ち主一人ひとりに合わせたオーダーメイドの鞄をつくって、お客様に心から喜んでもらうことが片岡さんの願いだ。
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REGALOのトートバック
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原宿にあるREGALOの店舗
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ミシンをかける片岡さん

鞄職人が語る、伊藤鞄製作所のDNA

-大切にしている考え方は何ですか
想いとしては、日本のものづくりの大切さを世の中の人に知っていただきたいと考えてます。そのことから「これがMADE in JAPANだ」と胸を張って言えるような鞄をつくりたいと思い描いています。そう思った背景には、当社が「MADE in JAPAN」にこだわって鞄づくりをしているということもありますが、自分自身としても、商品を世に出すなら、中途半端なものはつくりたくないと考えています。ひいては、自分の鞄づくりが日本のものづくりの技術を伝承していくことや、日本の発展にも影響があると考えて仕事に取り組んでいます。そう感じてやっていくことで自分も成長できますし、ものづくりの発展に寄与できるということも考えています。それが自分のモチベーションになって、鞄つくりにもより一層力が入りますね。
―鞄を作る上で、難しいところは何ですか
速く綺麗にやることですね。今のチームでは、私はミシンで縫う工程を担当しています。大きく分けて、型づくり、裁断、ミシン、仕上げという工程がある中、ミシンの出来が鞄の出来を決めると言っても過言ではありません。ミシンは、ゆっくりなら誰でもできるので、いかに綺麗に速く仕事を遂行していくかということに創意工夫しています。社長からも「ミシンはとにかく速く」と言われていて、なんとかものにしようと社長にコツを聞いたところ「失敗してもいいので、ミシンを思いっきり踏み込め」と教えてもらいました。やってみると、ゆっくりの時よりも、速い方が体で覚えようとするのか、意外と慣れてくるんですね。社長が「失敗してもいい」と言ってくれて、どんどんチャレンジさせてくれるので、とてもありがたいですし、成長は早いと思います。
―片岡さんから見た社長はどんな方ですか
社長は情熱のある人ですね。職人を育てること、業界を変えていくことにとても情熱を持っていると思います。普段同じチームでやらせてもらっているんですが、質問をするとすごく丁寧に、嬉しそうに教えてくれるんです。仕事の中で教えてくださる時もありますし、時には、仕事の後とか休みの日にも喜んで時間を作っていただき、親身に教えていただいています。つい最近も、展示会を見据えて、型紙の勉強をしたいとお願いしたところ、社長から「せっかくだから勉強したい人全員に教えよう」と言っていただき、勉強会を開くことになりました。職人としての腕が素晴らしいのはもちろんなのですが、「業界を変えたい」というビジョンを持って会社を経営しているところが職人としては稀有だと思いますし、触発されます。
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■監修企業からのコメント

株式会社伊藤鞄製作所 代表取締役 伊藤 勝典

噴出し左
今回取材に伺った伊藤鞄製作所のショールーム兼工場は、今までの工場のイメージを覆し、一見しただけでは工場と分からない瀟洒な建物です。建物一つでも、今までにない鞄を作っていきたいという伊藤社長の意気込みが伝わってきました。取材を通じてハード面、ソフト面の両面で、「100年続く鞄メーカー」へと成長するための基盤づくりを着実に進めていることを感じさせました。
■掲載企業コメント

株式会社伊藤鞄製作所 代表取締役 伊藤 勝典

噴出し右
取材を終えた感想
この度は当社のような中小企業にスポットを当てて頂き、誠にありがとうございました。当社に対し、取材していただくとともに、貴社の組織改革の事例などもご説明頂き、大変勉強になるとともに有意義な時間を過ごせたと感じます。ありがとうございました。
株式会社伊藤鞄製作所
代表取締役 伊藤 勝典
1960年 創業者伊藤正三が東京足立区にて有限会社伊藤鞄製作所を創業
1984年 株式会社伊藤鞄製作所に改組
1995年 自社ブランドとして株式会社レガロ設立
1996年 本社工場を足立区綾瀬に移転
1997年 伊藤勝典が代表取締役社長に就任
2014年 足立区綾瀬にショールームが完成
創業年(設立年) 1960年
事業内容 鞄・財布・革小物の生産、販売、修理
所在地 東京都足立区東綾瀬3-5-13
従業員数 82名
企業URL http://www.ito-kaban.jp/company.html

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