DENTOU TIMES

株式会社東京ベル製作所 市村 晃一 

これまでの成功にとらわれない
新機軸を生み出す

株式会社東京ベル製作所 代表取締役 市村晃一

東京ベルは、自転車メーカーのベル部門から独立して、1949年に自転車ベルの専業メーカーとして創業。国内では3社しかない自転車ベル製造メーカーとして、デザイン性の高いベルを開発し、その商品は、国内はもちろん、海外でも好評を博している。そして実は、自転車用ベルよりも多くの売上を占めるもう一つの主力事業が、店舗什器の製造である。店舗什器とは、スーパーやコンビニなどの小売店で、販売促進のためのPOPを掲示するための製品。東京ベルでは、東京都荒川区に本社兼工場を持つという立地の良さを生かし、多品種、少量生産、短納期での什器製造を行っているのである。今回は、市村晃一社長にこれまでの事業展開の歴史、そして展望についてお話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
  • 社風
    「話の通るまじめな町工場」
    「まじめな会社です」と市村社長が言うとおり、社長のインタビューからも、働く社員の皆様の様子からも、まじめさが伝わる東京ベル。
    東京ベルで働く方の大多数は、ものづくりをやりたいという想いで入社され、日々、ベルや店舗用什器の製造に打ち込んでいる。また、お客様からの要望にはできる限り応えたいという想いから、納期が厳しい仕事に対して全員が協力し、時には社長も現場に出て、納期を守ってきた。
    従業員に対しては、終業後の生活を充実させてほしいとの考えから、定時で帰宅できる環境を整備。今では、繁忙期や自主的に残業する方を除けば、ほとんどの社員が5時に帰宅することができていると言う。
    市村社長が「社員には東京ベルで働いて良かったと言われる会社、お客さんには東京ベルで注文して良かったと言われる会社にしたい」と言うように、社員とお客様の幸せを真摯に追求する会社である。
  • 独自性
    商品開発力に自信アリ
    東京ベルの独自性は、自転車用ベル、ベル関連製品における商品開発力の高さである。製品の開発にあたっては、顧問デザイナーの協力のもと、月に2回の開発会議にて新たな製品を考案。様々な試行錯誤を経て生み出された製品は、機能性と品質を保ちつつ、唯一無二のデザイン性を有している。その証拠に、数々のデザイン賞を受賞しており、特に人気なのが、世界最小の「チビ丸」シリーズや、グッドデザイン賞を受賞し、ニューヨーク近代美術館のショップでも販売されている「クリスタル・ベル」である。
    その人気は国内にとどまらず、海外でも「TOKYO BELL」ブランドとして好評で、現在では、ベル事業での売上の6割を海外での売上が占めている。欧米では、自転車が自動車と同じようにライフスタイルやステータスを表す道具として考えられており、周辺機器であるベルへのこだわりが高い。そうした背景もあり、東京ベルのこだわりの製品が人気を博しているのである。
  • 展望
    自転車用ベル、什器に次ぐ、第三軸を生み出す
    国内・海外で確固たる地位を築いている自転車用ベル、そして、現在の主力製品である店舗用什器に加えて、技術を活かした第三軸を構築し、会社を成長させることが東京ベルの目標である。海外との価格競争が激しい既存の商品とは異なり、付加価値が高く価格競争にならない商品の開発を狙っている。そのような状況の中、東京ベルが第一の矢として打ち出した製品が、登山者用の熊避けベルだ。
    登山者用ベルとは、登山者が熊に存在を知らせるために身に付けているベルである。東京ベルは、従来のベルには無かった消音機能を付けた熊避けベルを開発。鳴らしたい時にだけ音を鳴らせる機能が好評で、山登り愛好家に支持されている。登山者用ベルのほかには、風鈴やトレイルランニング用ベルなど、自転車以外でもベルが用いられる業界に着目し、東京ベルの未来を担う製品の開発に取り組んでいる。
説明画像
クリスタルベルのラインナップ
説明画像
熊避けベル「森の鈴」
説明画像
自転車用「チビ丸」

社長に聞いた、ビジネスの転換点

―東京ベルの転機となったのはいつですか
転機は今から30年くらい前に、什器関係の仕事を始めたことです。金属加工ができる東京の会社を探している会社さんにお願いされたのがきっかけです。そうしたご縁で店舗什器の製造を始めましたが、什器をやっていたからこそ売上を伸ばすことができました。
自転車のベルに関しては、1973年にオイルショックがあって、自動車より自転車を使おうという機運の中、ベルがものすごく売れる時代がありました。しかし、20年前くらいから中国での生産が始まって、それから徐々に生産が中国にシフトしていったんです。だからその時にベルだけをやっていたなら、売上は2億くらいで止まっていたと思います。 当社は、中国での生産が本格的になる前から什器の仕事をやっていたので、今の会長が若い頃は大変だったようですが、僕の時代は大きな苦労なく、会社を伸ばすことに注力できました。
―熊避けベル「森の鈴」の開発秘話を教えてください
顧問デザイナーが「熊避けのベルがあってね」と開発会議に持ってきたのが最初ですね。話を聞いてみると自転車のベルとは全然違う。自転車のベルは鳴らしたい時にだけ鳴らしますが、熊避けのベルはカバンやリュックに付けて、山登り中、常に鳴らしておくものなんです。だから、これまでにあった熊避けのベルは、音を消すという発想がなかったんです。山に行くまでの移動中や宿でも鳴りっ放しでうるさいから、音を出さないようにするために、中にティッシュを詰めたり、袋に入れたりして保管していたようです。私たちはその一手間に着目して、ワンタッチで消音できるようにしたんです。自画自賛にはなりますが、消音機能を付け加えたのがヒットして、人気商品になっています。
―どのように販路を拡大したんですか
我々にとって、熊避けのベルは初めての領域でしたので、どのように売ったら良いか分からなかったんです。手探りで販路を探す中、一番最初は、老舗の登山用具店に飛び込みでアイデアを持って行きました。そこで、用具店の担当者から「考え方が良い」という反応を貰ったんです。嬉しかったですね。社内でもこれはいけるということになり、試作品を作って持って行った結果、その登山用具店と取引ができるようになりました。その会社は業界でも影響力のある会社だったので、そことの取引をきっかけに、知名度が上がっていきました。
その他に釣り具屋さんや、卸会社さんとも取引がありますし、最近では森林組合などにも売り込んで、さらなる販路拡大を狙っています。

KEYPERSON

株式会社東京ベル製作所 市村 晃一 

先輩の技術を、
全て引き継ぎたい

株式会社東京ベル製作所 生産管理主任 和田嘉男

東京ベルの押しも押されぬ二本柱である、自転車用ベルと店舗什器。現在は生産拠点を二分して、自転車用ベルは埼玉工場で、店舗什器は東京本社工場で製造されている。東京に什器の製造を集中させたのは、多品種少量生産かつ短納期での製造に特化し、国内、海外の競合との争いに勝つためである。東京ベルでは、長い年月をかけて協力工場との連携力を高めることで、加工の低価格化を進めた。さらに、東京都荒川区に本社があるという立地の利点を生かし、納品までの時間を短縮することによって、工期の短縮を実現することで、競合に打ち勝ってきた。
今回の取材では、自らも什器の製造に携わり、生産管理主任として日々奮闘する和田さんに、東京の本社工場を代表してお話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
  • 入社理由
    ものづくりの経験を活かし、将来の担い手となる
    中途採用で昨年東京ベルに入社した和田さん。入社してからの日は浅いが、経験豊富な先輩社員に教わりながら、部材の発注から、検査、組み立て、梱包という業務に携わっている。
    前職でも鉄の加工やメッキ、塗装の仕事をしており、自身の経験を生かせる仕事は何かという観点で転職先を探していたと言う。
    和田さんが前職から続けて、製造業を生業として選んだ根本には、日本のものづくりを引き継いで守っていきたいという想いがある。これまで、ものづくりの現場に身を置く中で、周囲のものづくりの会社の衰退や廃業を目の当たりにしてきた。環境に対する規制が厳しくなったことや、人手不足、後継者不足など、理由は様々だが、これまで日本のものづくりを支えてきた技術やノウハウ、そして人材が引き継がれずに失われていく。それを食い止めるためにも若い世代として技術を引き継いでいきたいと言う。
  • やりがい
    短納期でお客様に製品を提供すること
    短納期のものをやりきった時。それが和田さんのやりがいだ。店舗什器は納期が短い。必要数が明らかになってから、店舗がオープンするまでの短い期間で納品することが要求される。例えば、スーパーなら、店舗の内装が決まり、売場のレイアウトが決まり、いざ品物を入れるタイミングになって初めて、いくつの販促用什器が必要になるかはっきりするのである。
    そうした商材の性質上、時には、当日納品、翌日納品など「無理だ」と思われる発注もあると言う。しかし、そこで「できません」と断らないのが、東京ベルの流儀。会社として売上を追求する気持ちがあるのはもちろん、お客様あっての仕事という想いを持っているからこそ、できる方法を考えられるという。和田さん自身も納期が厳しくても、周囲の力を借りつつ、時には夜遅くまで頑張ったり社長に手伝ってもらうなど、手を尽くして、なんとか納品できた時が一番嬉しい時だと教えてくれた。
  • 夢
    「この道20年」の技術を身に付け、後進を育てる
    「先輩の持てる技術全てを引き継ぐのが目標ですね」と和田さんは語る。今の和田さんの目標でもあり、社長からも宿題として与えられているのが、同じ部署で働く入社20年の先輩社員の技術を盗み、自分のものにすることである。インタビューの中でも、今は仕事の進め方や具体的な工法などを聞きながら、一つ一つ学んでいる最中だと教えてくれた。 社内の平均年齢が上がっていく中で、これからも東京ベルを存続、発展させていくためには、技術・ノウハウの伝承が必要不可欠だ。
    和田さんも、技術・ノウハウを次世代に引き継いでいくことの重要性を感じている。だからこそ、まずは自分自身が、先輩の技術を盗み、力を付けること。そして、いざ若い人材が入ってきた時に、和田さん自身が後進を育てられるように、身に付けた技術・ノウハウを伝承し、人材育成ができるようになりたいと言う。
説明画像
風鈴の製造も行っている
説明画像
製造している店舗什器の一種
説明画像
一つ一つに魂を込めて加工する

ベルだけじゃない。東京ベルの良いところ

―和田さんが感じる東京ベル製作所の良いところはどこですか
ずばり、納期。短納期。素晴らしいですね。これほど短納期の納品をやってのけるっていうのは素晴らしいことだと思います。製品在庫を持たずに、部品在庫だけ持っておくという仕組みなんですね。すごい仕組みだなと思いますね。仕組み的には過去のデータを使って、部品在庫をどれだけ持つか決めています。経営手腕が問われるところだなと思います。
ほかには、無理難題があった時に、みんな集まってくれて、方法を教えてくれる。皆で話し合って「じゃあ行こう」となるのは良いところだと思いますね。皆さん現場ですから口は悪いですが、本音で話してくれるので気持ちは休まりますし、議論をする時も、皆さん辿り着かなきゃいけない納期とか数量というゴールから考えるので、話が早いんです。
―東京ベル製作所らしさについて教えてください
一番東京ベルらしいのは、低価格での生産ですね。協力会社様に頑張っていただいて、加工費をできるだけ安く抑えています。やはり、価格を抑えることで、海外から入ってくるものに勝てる。薄利ですけどね。
そこで重要になってくるのは協力会社さんとの関係を維持していくことです。そのために、日々コミュニケーションをしっかり取って、意思疎通をすることを心掛けています。単純に注文書を流しただけでは、「できるか!」と怒られたり、「できない!」ってはねつけられることもあります。そこを面と向かって話して「この単価でできる方法ないですかね?」って聞く。そうすると皆さんプロですから、知恵をくれたり、なんとかできる方法を考えてくれる。そうやって、協力会社と関係を深めながら仕事を進めていくのが東京ベルらしさじゃないですかね。
―これからの東京ベルのために取り組んでいきたいことについて教えてください
業務に関するマニュアルを作ることですね。業務プロセス、業務フローが明文化されていない部分があります。今は、どのような工程で仕事を進めて行くのかという部分が不明確なので、誰かが休むと会社自体が止まってしまうという怖さがあります。その人しか分からない仕事が存在するんですね。インフルエンザで休まないといけないとか、冠婚葬祭であるとか、そういう突発的なことが起きたとしても、マニュアルのようなものがあれば対応できると思います。そういった部分はこれから自分が中心となって取り組んでいきたいです。それからさらに、ISOを取得したり、生産管理システムを入れたり、お金がかかることですけど、そういったことにも取り組んで、短期間で良いものを納品できるという東京ベルの強みを伸ばしていきたいです。
■監修企業からのコメント

株式会社東京ベル製作所 市村 晃一 

噴出し左
店舗什器の製造について短期間での納品を得意とする東京ベル。東京本社工場に訪問させていただいた取材日は、ちょうど納期の短い仕事が舞い込んできたタイミングでした。社長ご自身が現場に出て、什器製造を行ってらっしゃる様子を見て、社内が一丸となってものづくりに取り組んでいらっしゃること、ものづくりに情熱をかけていらっしゃることが伝わってきました。
■掲載企業コメント

株式会社東京ベル製作所 市村 晃一 

噴出し右
取材を終えた感想
最近の流れとして生産現場が海外へシフトしていく中、やはり国内での生産は重要だと思います。若い人材に製造業の魅力を伝えていただけると有難いです。今すぐというわけではありませんが、弊社も平均年齢が高くなってきており、ものづくりに興味がある若い人を積極的に採用していきたいです。
株式会社東京ベル製作所
市村 晃一 
1949年 豊島区西巣鴨にて自転車用ベル製造メーカーとして創業
1957年 荒川区西尾久に移転
1974年 埼玉県加須市に埼玉工場を開設
1988年 本社屋を荒川区西尾久に建替新築、現在に至る
1988年 ユニバーサルベルが通産省選定グッドデザイン商品に
1996年 チビ太が(財)大阪デザインセンター選定グッドデザイン商品に
2001年 ロータリーベルが通産省認定
    グッドデザイン賞ロングライフデザイン賞受賞
2010年 MoMA Design Store,New Yorkでクリスタルベルを取り扱い開始
2011年 アウトドア用品として、TB-K1森の鈴(BEAR BELL)を開発
2014年 和雑貨・ギフト用品として風鈴(消音機能付)を開発
事業内容 自動車用ベル、熊避けベル、店舗ディスプレイ什器の製造
所在地 東京都荒川区西尾久4丁目8番地4号
資本金 4,650万円
従業員数 34名
会社URL http://www.tokyobell.co.jp/index.html

※このサイトは、取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。 ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性についてイシン(株)は何ら保証しないことをご了承ください。 自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。

ページのTOPへ