DENTOU TIMES

株式会社浜野製作所 代表取締役 浜野 慶一

地域の資源を活かして、
新しいものづくり中小企業をつくる

株式会社浜野製作所 代表取締役 浜野慶一

このエントリーをはてなブックマークに追加

浜野製作所は町工場が集まる東京都墨田区に位置し、創業以来、金属加工一筋で技術を磨いてきた。その技術は非常に高く、レーザー加工コンテストでの受賞歴もあるほどだ。
浜野製作所にとって大きな転機となったのは、浜野社長が二代目社長として経営を引き継いだ後の2000年。もらい火で工場が全焼してしまうという大きな災難に見舞われた。
火事の後、地域の方々に助けられた経験から、浜野製作所は、お客様・スタッフ、地域に感謝、還元するという経営理念を掲げ、積極的に地域の資源を活用して、ものづくりを行っている。培った技術と地域資源の融合によって、新しいものづくり中小企業をつくり上げた、浜野社長にお話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
  • 社風
    社員への積極的な情報開示が生んだ、チャレンジする社風
    どんどん新しいことにチャレンジできる社員が揃っていると公言する浜野社長。社員にそうした社風を浸透させることができた背景には、徹底した情報開示があった。浜野製作所では、社員はもちろんパートの方にまで会社の数字を開示している。さらには、評価のルール、ボーナスの決め方など、会社経営にまつわるルールをとことん共有している。社員一人ひとりが売上利益と自らの給与・賞与の関係を理解しているため、全員が「給与や賞与を上げるためには、会社の売上、利益を上げることが必要不可欠である」という意識を持っている。だからこそ、ものづくりの中小企業を取り巻く環境が変化し、厳しい状況が続く中であっても、社員から自発的に状況を打破するためのアイデアが提案されたり、数字を上げるためのチャレンジが生まれる社風が培われた。
  • 独自性
    東京という地域が持つ資源を活かし、ものづくりの上流で仕事をする
    一般的には、地価も人件費も高い東京は、日本でも世界でも、ものづくりには最も適さない地域であるという。しかし、そんな環境の中、浜野製作所は、ものづくりにおける地産池消という考えから、東京という地域がもつ資源である情報・知能に着目し、今までにない方法で有効活用している。産学官連携に非常に積極的であり、高い製造技術を持ちつつ、企画開発・設計も手掛ける会社として知られている。例えば、墨田区、早稲田大学、そして墨田区の中小企業の連携で、電気自動車「HOKUSAI」を開発、深海探査艇「江戸っ子1号」プロジェクトへの参加、「新ものづくり創出拠点」Garage Sumidaでの起業家支援、インキュベーションなど、積極的に地域と連携し、新しいものづくりの企業として独自性を発揮している。
  • 展望
    今までにないものづくり企業の在り方を示す
    設計開発とGarage Sumidaが今後の浜野製作所が発展する上での鍵となる。
    設計開発は、ものづくりの上流工程を目指すために大きな役割を果たすだろう。浜野製作所は、日々現場で金属を触って仕事をしているため、金属や加工についてのノウハウが豊富である。そのノウハウを活かし、発注元に対して「この部分に関しては当社が詳しいので自分達で設計しますよ」と提言できるように設計機能を強化し、セクションの一部だった設計開発を一つの部門に昇格させた。
    またGarage Sumidaは、「新ものづくり創出拠点」として、芸術家や若手起業家と今までにないものづくりを行っていく現場になる。ものづくりの世界でも3Dプリンターをはじめとして、新しい設備が出てきたが、新たな製品を作る際、3Dプリンターではなく、何十年も培ってきた基盤技術で作った方が良い場合もあるそうだ。今までのものづくりの技術と最新の技術を組み合わせて、ものづくりを始めたい人の思いを実現する場として、Garage Sumidaを活用していく計画だ。
説明画像
仕上がりの美しさに自信
説明画像
Garage Sumida内部
説明画像
電気自動車HOKUSAI

地域の資源を活かすとはどういうことか

―なぜ地域の資源を積極的に活用しようと考えたのですか
墨田区は最盛期に約1万社の町工場が存在しましたが、今は3100社くらいになっています。墨田区役所の調査ではここ数年でさらに500社ほど減り、5年以内に最盛期の4分の1になるという統計が出ています。東大阪も3万社あった工場が6500社ほどになっています。この現状に、大きな危機感を覚えています。
なぜなら、ものづくりの企業は土地代や設備代といった初期投資が大きい業界なので新規創業がほとんどありません。つまり、一度無くなったら日本国内ではもう立ち上がってこない可能性があります。どうにかして今ある企業が減るのを抑制しないといけません。この国のものづくりを次の世代に引き継いでいくために、中小企業は大手企業への依存をやめ、地域の資源をうまく活用して付加価値を高めていく必要があるのです。
―経営理念と地域を活かすことの関連を教えてください
当社の経営理念は、(「おもてなしの心」を常に持ってお客様・スタッフ・地域に感謝・還元し、夢(自己実現)と希望と誇りを持った活力ある企業を目指そう!)お客様・スタッフ・地域という三つがキーワードになっています。実はこの経営理念はある経営危機を契機に作られました。
今から11年くらい前、会社が少し成長するフェーズの時に、社内がガタガタになったことがありました。その時に初めて自分自身でこの会社をどうしたいのか、どういう経営者になっていかないといけないのかを真剣に考えました。その時に思い出されたのが、2000年6月30日の火事でした。隣からのもらい火で工場に燃え移り、工場が全焼してしまいましたが、この時、工場の再建にあたって、大家さんが特別に安く工場を貸してくれたり、取引先の担当者が心配して駆けつけてくれたり、地域の人たちにとても助けてもらいました。その時の恩返しをするという意味で、地域の皆様へ感謝・還元することを常に意識しています。
―今後力を入れていきたいことは何ですか
お客様やパートナーが欲しがっている情報を発信すること。そして、昨年の4月にオープンしたGarage Sumidaです。 Garage Sumidaには非常に可能性を感じていますが、今は人材不足で物理的に回っていません。そのために今年6人の社員を採用しました。6人全員がGarage Sumidaの可能性を伸ばしてくれるような人材です。
Garage Sumidaには色々な可能性があります。今までの中小企業は大手企業向けに技術革新や情報発信を行えば、仕事を得ることができました。しかし、近年では大手企業が不調であったり、費用を抑えるために海外で製造するというように環境が変わってきています。ものづくりの中小企業を取り巻く環境が変わっていく中で、我々が新しい市場を作っていくことも可能だろうというのがGarage Sumidaなのです。

KEYPERSON

株式会社浜野製作所 代表取締役 浜野 慶一

浜野製作所から
中小企業を盛り上げていきたい

株式会社浜野製作所 経営管理部 小林亮

小林さんが新卒で入社したのは、エンターテイメント業界のベンチャー企業。華やかな業界で一通りの経験を積んだのち、転職を考えて自分の将来を改めて見つめ直した。その時に思い出したのが、大学時代にゼミの活動を通じて知っていた浜野製作所だった。ベンチャー企業からものづくりの中小企業への転職。入社のきっかけは「ノリ」と言いながらも、「魅力的なものづくりの中小企業を増やしたい」という、ものづくりに対する熱い思いを抱いての入社だった。現在は、浜野製作所の“敏腕プロデューサー”として、Garage Sumidaの運営、広報担当など「営業と製造以外全部」の業務で幅広く活躍される小林さんにお話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
  • 入社理由
    きっかけは大学時代
    前職は、エンターテイメント業界のベンチャー企業。そこでイベントの企画から運営、誘導、グッズ作成、動画配信、人のマネジメントなど様々な経験を積んだ。一通りの仕事をやりきって、人生をどうすべきか考えていたときに、大学時代から知っていた、浜野社長から声がかかり、「ノリ」で浜野製作所への入社を決めたという。小林さんと浜野製作所の出会いは10年前。大学のゼミの活動で日本各地の中小企業を訪問し、工場を見学したり、改善提案のような活動を行っていた小林さんが、墨田区を訪問したときに出会ったのが、当時若手社長として注目を集めていた浜野社長だった。大学時代に、浜野社長や金岡常務と飲んで語った経験が、「ものづくりの中小企業をプロデューサー的な立場で見るような仕事」に関心を持つきっかけとなったそうだ。
  • やりがい
    「しでかしそう」な雰囲気がある
    今の浜野製作所には、何か大きなことを「しでかしそう」な雰囲気があるという。浜野製作所から、町の中小企業が成功する事例を作り、他の中小企業を盛り上げたいという思いを持つ小林さんにとって、今の浜野製作所には、新しいものづくりの中小企業を確立するための環境が整っている。創業以来培ってきた浜野製作所の強みである加工の技術はもちろん、設備面では、新たなものづくりの可能性を拓くGarege Sumidaが既にスタートし、ものづくりに目を向けてもらう場、ものづくりを始める人たちをつなぐ場として機能し始めている。人材面においても、何かをやってくれそうな個性あふれる6人を採用し、Garage Sumidaの可能性を広げていく準備が整った。プロデューサーとして、万全の態勢で勝負できることにやりがいを感じている。
  • 夢
    たくさんの人が一緒に働きたいと思えるような会社を作っていきたい
    近年、日本の「ものづくり」が注目を浴びている。しかし、人不足が原因で、ものづくり中小企業の廃業が相次いでいる。中小企業には、魅力があるが、それを十分に伝えることができていない。いかに尊い事業をやっていたとしても、ものづくりの現場に入り込んで働く人はほとんどいないというのが実情である。小林さんは、中小企業の中に入り込んで働く人を増やすための一歩として、まずは浜野製作所を一つの成功事例にしたいと言う。浜野製作所をきちんと利益を上げられる、高収益の会社にしていくことで、ここで一緒に働きたい、ここで何かをしたいという人を増やす。そして、中小企業全体として、良いことをやっているのに継ぎ手がいない、潰れてしまうという状態を改善していくために、中小企業を内側から魅力的にしていきたいというのが小林さんの夢である。
説明画像
職人の技術の結晶、金型
説明画像
Garage Sumidaにて打合せ
説明画像
ロボットバトルにも参加

浜野製作所から中小企業を盛り上げていきたい

―中小企業を中から変えようと思ったのはなぜですか
約10年前、大学のゼミで中小企業のホームページを作る活動をしている際に、外側の人間の無力さを感じました。ホームページが完成した瞬間こそ喜ばれますが、追加でちょっとした業務改善を提案しても実行されず、実行されても継続しませんでした。所詮外からの意見に過ぎず、中小企業の人を動かせなかったのです。だから、中小企業を変えるために、一回どっぷり中小企業に浸かって、工場の世界、職人の世界を実際に体験してみる必要があると思いました。深くまで入り込むからこそ分かることがあり、中小企業の人を動かすことができるのだと思います。
―中小企業の中にいるからこそ見えたことは何ですか
社長以外に稼げる人がいない中小企業が多いということです。東京では土地柄もあり、お客様から良いお話を頂くこともあります。企業が成長するために、頂いた仕事で利益を出し、次の仕事につなげることが大切ですが、社長しか利益を出す意識を持っていない企業がほとんどです。なぜなら、中小企業のものづくりは製造を中心に動いており、往々にして利益を二の次にしてしまう傾向があるからです。例えば、製造の人は「この製品は原価がいくらで、製造のコストがどれくらいか」には関心がありますが、目の前の仕事に集中しすぎて「いくら稼ぐか」に対する意識が薄くなってしまいます。社内に稼ぐ意識がない状況で、社長の仕事が回らなくなってしまうと、結果として利益の低い仕事が増え、会社全体が疲弊してしまいます。こうした中小企業の現状を知ったからこそ、浜野製作所ではそれを避けるために、社長に頼らない体制づくりを行いたいと考えています。
―浜野製作所のビジョンを教えてください
高収益の会社にして、働いている人に還元できるようにしていきたいです。サービスであれば、大きく当たることもありますが、ものづくりは本当に地道で、メーカーとまではいかなくても、自分たちで生み出していくという要素を増やすことが今後数年の課題だと思います。つまり、開発設計の上流工程から関わり、ものづくりの主導権を握っていくということです。
また、Garage Sumidaを通じて、新しいお客さんは確実に増えていくと思います。現在、WEBを使ってものづくりのすそ野を広げる活動はいくつか生まれてきています。しかし、WEBだけで完結してしまうと面白くないと思っています。だからGarage Sumidaでは、実際の加工の現場などを見てもらって、ものづくりに目を向けてもらえるようなきっかけを作ったり、設備を用意して、ものづくりを始める人たちを取り込んでいく拠点にしていきたいと思っています。
このエントリーをはてなブックマークに追加
■監修企業からのコメント

株式会社浜野製作所 代表取締役 浜野 慶一

噴出し左
今回訪問させて頂いた浜野製作所の工場は色彩豊かでスタイリッシュな建物で、一見しただけでは工場には見えません。しかし、その工場の内部では、創業以来培ってきた金属加工の技術を活かした、ものづくりが行われています。伝統的な技術と新しいものづくりの技術を融合し、新しいものづくり企業像を作ることは浜野製作所の一つのテーマですが、建物からも、ものづくり企業の新しいスタイルを目指していることが伝わってきました。
■掲載企業コメント

株式会社浜野製作所 代表取締役 浜野 慶一

噴出し右
取材を終えた感想
我々、ものづくり中小企業を取り巻く環境は日々急速に変化していますが、経営理念にある「お客様・スタッフ・地域に感謝・還元する」ことに変わりはありません。そうした想いを持って、社内のチャレンジ精神を高め、地域資源を活かしながら、わくわくするような新しいものづくり中小企業を作ってまいりたいと思います。
株式会社浜野製作所
代表取締役 浜野 慶一
1968年6月 浜野嘉彦が墨田区八広に浜野製作所(金属金型工場)を立上げる
1978年9月 工場を墨田区八広に建設し、資本金500万円で㈱浜野製作所を設立。
1993年5月 創業者 浜野嘉彦の死去に伴い浜野慶一が代表取締役社長に就任。
2000年6月 本社兼工場が近隣の火災によるもらい火により全焼。同年6月、墨田区東墨田にて仮工場により営業再開。
2007年5月 『レーザー加工作品コンテスト』第2位受賞。
2007年6月 ISO14001(環境)認証取得。
2008年11月 ISO9001(品質)認証取得。
2012年1月 深海探査艇「江戸っ子1号」プロジェクト調印式
2014年4月 ものづくり実験施設「Garage Sumida(ガレージスミダ)」オープン
2014年9月 「江戸っ子1号」プロジェクトが第12回産学官連携功労者表彰(内閣総理大臣賞)
創業年 (設立年) 1968年
事業内容 板金・架台・筐体設計 各種アッセンブリ加工 精密板金加工・レーザー加工 金属プレス金型製作 金属プレス加工 切削加工・機械加工 複合加工 開発・設計 試作製作
所在地 〒131-0041 東京都墨田区八広4-39-7
資本金 1000万円
従業員数 34名
企業URL http://www.hamano-products.co.jp/
採用情報はこちら

※このサイトは、取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。 ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性についてイシン(株)は何ら保証しないことをご了承ください。 自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。

ページのTOPへ